「…………」
(もふもふさくさく)
「鈴木さん」
「はい」
「何をしているのでしょうか?」
「雪を食べています。新鮮な雪を」
「その左手に持っているものは何でしょうか?」
「茶筒です。これ、京都産の高級抹茶ですよ。山田も天然の抹茶かき氷食べますか?」
「結構です」
「思ってたのより美味しくなかった……」
「じゃあ勧めないでください」
「いや、練乳で抹茶ミルクにすれば」
「そういう問題ではないです。雪って空気中のゴミが混ざってるんで、衛生的にも良くないですよ」
「細かいことを言う山田には、いいものあげない」
「え、いいものってなんですか?」
「緑の雪だるま。抹茶を振りかけ、しかも大から小までいっぱい作ってマトリョーシカ風に」
「抹茶は大事に使って下さい。あと、雪だるまをそんなにもらっても、手で運ぶうちに溶けてしまいます」
「あ、以前、私が学校に登校すると、机の上に雪だるまがプレゼントされてたことがあったよ。で、雪だるまがぐしょぐしょで、机がびしょびしょでさあ……」(遠い目)
「それっていじめでは……?」
「でも、今回は大丈夫。山田の手が濡れないように、且つ、雪だるまが溶けないように、これ持ってきたから。じゃん!」
「なんすかそれ」
「ペトリ皿」
「え」
「理科室からくすねてきた」
「ええっ」
「ステキでしょ、ペトリ」
「いや、これ、シャーレじゃないですか」
「ううん、ドイツの細菌学者、ユリウス・リヒャルト・ペトリさんが作ったペトリ皿って言うんだよ」
「また適当な……」
「そして、この雪だるまを乗せて、プレゼントフォーユー!」
「いらないです……」
「えー。この雪だるまを溶かしたら、中から指輪のプレゼントとかお金とか出てくるかもしれないよ? ロマンチックあげる!」
「えー、本当に?」
(カサカササクサク)
「へへへ」
「あれ? なんか鍵のようなものが……」
「それは山田のロッカーの鍵です」
「ええっ! いつのまに!」
「その鍵でロッカーを開けると、中にはプレゼントが」
「本当ですか……? もう信じませんよ」
「ほんとだよ。雪だるまの」
「え、教科書とかびしょ濡れになるじゃないですかー! 嫌がらせなんてやめてくださいよもう!」

(山田、ダッシュでロッカーへ向かう)




「雪だるま型のチョコをロッカーに入れといたの。山田はせっかちさんだなあ」